アニメーターってこんな仕事
2013年以降、アニメ市場の規模が毎年最高値を更新しているまさに第4次アニメブーム真っただ中の現在。内閣府のクールジャパン戦略でも、世界と日本両方からその価値を認められています。制作に影響があったコロナ禍の2020年夏クールでさえ、35本の新作アニメが放送されています。
そんなアニメーションを主に制作しているのがアニメーターです。アニメスタッフには原作、監督、シリーズ構成(脚本)、キャラクター原案(デザイン)、美術監督、色彩設計、3D監督、撮影監督、音響監督、特殊効果、編集、音楽、声優などがいて、アニメーターはOPやED映像含めた絵を制作します。
アニメーターのメインとなる仕事は、動画、原画それとCGを使うことです。この工程が進まないとアフレコや編集に遅れが生じてしまうので大変重要な責任を負っていると言うことができます。
近年では1995年のトイストーリーを封切りに、3DCGアニメーションが制作されるようになりました。日本でも「アルペジオ」「シドニア」「亜人」といった人気漫画がセルルック3DCGで制作され、3DCGが受け入れられてきているところです。
映画「STAND BY ME ドラえもん」でも採用され、好評を博したのは記憶に新しいでしょう。2014年の日本での映画興行収入2位に食い込んでいます。一般的なアニメーターだけでなく、CGクリエイターも必要とされているのが今のアニメーター業界です。3Dアニメーターになるにはどうすれば良いのか?という疑問にも答えます。
それでは、アニメーターになるために必要なことを解説します。
アニメーターになるのに必要な資格や能力って何?
絶対に必要な資格はありません。アニメーターとペイント(仕上)の仕事は違うことには注意しましょう。アニメの原画や動画を描くと言うと、色付けまでやるのかな?と思うかもしれませんが、アニメ―タ―は線画だけの担当です。
アニメ―ターが最終的に作画監督、キャラデザを目指すのに対して、ペイントは色彩設計を目指します。さて、30分アニメでは1作品原画300枚、動画4,000枚必要です。それを毎作品こなすアニメーターに求められるのは、レイアウトや芝居の力とそれに見合った画力だと言います。
つまり芸術家というより、職人として一定のクオリティで大量に描くことが、アニメ―ターに必要なことです。色んなものの動きに興味を持って、記憶したり記録しておくことが重要だとアドバイスしている制作会社もあります。
とにかく量をこなさなければいけない原画や動画作業の中に、自分なりの楽しさを見い出すことが長くアニメ―ターを続けられる人の特徴ではないでしょうか。
一方で、花咲くいろはで有名なP.A.WORKSの関口可奈味さんは、たくさん描いて行き詰ったら他のことをやって気分転換すると言っています。アニメSHIROBAKOのアニメーター安原絵麻がやっている、エンゼル体操のような息抜きが見つかると原画も進みそうです。
どうすればアニメーターになれるのか
アニメーターの応募は、求人サイトや制作会社のホームページの募集に申し込むことでできます。新卒採用と中途採用がありますが、試験の内容は書類選考、面談、作画試験となっています。
契約内容ですが、1年間の業務委託契約(期間契約)または正社員採用です。仮に実力不足または性格に難があると判断されれば、契約が更新されないという事態になります。
また制作会社によっては、独自のアニメーター養成所やプロ養成塾で指導してアニメーターを採用するところもあります。有名どころ3つを挙げておくと、京都アニメーション・アニメーションドゥウ プロ養成塾(以下京アニ)と、P.A.養成所(以下P.A.)、サンライズ作画塾(以下サンライズ)です。
アニメーター養成所で何が身につくかということですが、コミュニケーション能力と絵の技術です。
アニメーター養成所からアニメーターに
アニメーター養成所は各制作会社の直下にあるので、その制作会社独自の技術を学ぶことができます。カリキュラムは2か月みっちり基本に忠実に描く練習をして、その後は半年ほど動画演習で作画の基本を学び、原画演習で高い技術力を持つアニメーターを目指すのです。
そして募集要項も確認しなくてはなりません。基本的には高校卒業後の18歳から25歳までという条件があります。ただし、京アニでは、遅れを巻き返す覚悟があれば個別に相談出来るようです。
ただし、京アニでは学費が年間30万円(入社した場合無料)、P.A.では576,000円かかります。あれ?サンライズは?と思われたことでしょう。サンライズは学費が無料で、さらに条件を満たせば奨励金10万円が受け取れることもあります。ガンダム、ラブライブ!、アイカツ!といった超人気作を作る老舗だからこその取り組みでしょう。
どこも募集人数は数人から十数人と少数精鋭になっていますから、相当狭き門と言わざるを得ません。まずは学校でアニメーターとしての腕を磨き、その上でアニメーター養成所や制作会社の採用試験に臨むのが確実ではありませんか?
高校からアニメーターに
高校生までに絵の技術を磨き、かなり自信があるという方はいきなりアニメーター採用試験を受けてみるべきだと思います。卒業後から現場で描いてしまえば、それがそのままスキルアップにつながりますし、二十代前半で作画監督に上り詰めることも可能です。
アニメーターとしての技術を身に付けるのに若いに越したことはないです。よく大学まで出ていないと不安だと聞きますが、実力がものをいう世界であるアニメーターに学歴は関係しないと考えてよいでしょう。
アニメーターにとっての描く技術は、物理で殴るということです。描く技術を上げるには実戦的な描くという行為の積み重ねが何より重要になります。PhotoshopやTVPaintを使えるようにしておくこともお忘れなく。
そうは言っても、もちろん周りの仕事仲間とのコミュニケーションも重要ですので、人の話を自分の言葉で言い換えられるようにして、自分の表現を言葉で表現できるようにしましょう。アニメーターはあくまで職人であって、自由奔放なアーティストではないことと、アニメ制作はチームプレイだということを覚えておいてください。
専門学校からアニメーターに
高校を卒業して、いきなりアニメーターはちょっと……という方の多くは専門学校に進学するでしょう。2年間専門学校のアニメーション学科または3DCG学科で学ぶことで、現場に出ても通用する画力を身に付けることが目標になります。
実際のカリキュラムがどんなものなのか、という一例の紹介です。
アミューズメントメディア総合学院アニメーション学科
アニメーター学科では、骨格や身体の軸からモノを捉えて、線で表現するデッサンの授業から始まり、基本的な人間の動作を表現できるように練習し、一人前の技術を身に付けます。またAdobeアプリをベースに編集についても勉強できるので、需要の高い動画編集スキルも身につきます。
3DCG学科では、ゲームやアニメ制作実習を通して現場に即したカリキュラムで、実際にやって身に付けるというものになります。1年生でゲーム制作、2年生でアニメ制作です。アニメーター養成所はありますが、3DCGアニメーターは自分で勉強して習得するのでそれに適した学習方法といえます。
さらに、募集で3Dソフト(Maya、3ds Max)を使えることを必須条件にしている制作会社もあるので、3DCGアニメーター志望者は3Dソフトをできるだけ使うようにしてスキルを身に付けましょう。
どちらのコースも現場につながる実戦形式を採用していて、講師は現役のアニメーターや作画監督、アニメーション監督です。みなさんと同じ志を持ってアニメーターになられた方々なので、安心して指導を受けて相談できることでしょう。
各学科の特徴やカリキュラムに関しては、無料で請求できる資料から確認してください。
アニメーター専門学校の次は、大学からアニメーターになることはできるのか?どうか紹介します!
大学からアニメーターにはなれる?
高校卒業後なら18歳、専門学校卒業後なら20歳、大学卒業後となると23歳でアニメーターとしてのキャリアが始まります。アニメーターの募集は18歳から25歳までですから、年齢制限には問題ないです。
アニメ制作会社の募集では、制作進行、営業、デザイナー、マネージャーなどがありますが、いずれも高卒以上なら応募が可能ですから学歴は評価にあまり影響しないということが分かります。
SHIROBAKOの世界を見ても分かるようにとにかくハードな業界ですから、技術はもちろんのこと、熱意とタフさが重要だということです。つまり、18歳から25歳までならスタートするのに不利になることはないといえます。
さて、学部問わず募集できるとは言え、絵の技術が無ければ採用されることはありません。独学やアトリエで絵の練習をしているか、芸術や美術系もしくは建築系の学部学科であることが必要でしょう。
したがって、大学を卒業してからアニメーターになる場合に必要な条件は、①絵の技術があること②向上心があること③熱意とタフさがあることの3つです。大学生は自由な時間が多いので、アニメーターになることを意識しているなら自然豊かな場所に実際に行ってみてください。
実際に働きだすと忙しくてロケハンになかなか行けないので、働きだす前にいろいろな場所に行って風景や街並み、人物を観察する時間を作れるのは強みになるでしょう。大学生は心に余裕(寄生獣で言うところのヒマ)が一番ある時期なので、行動的に過ごすのがおすすめです。
ディズニーやピクサー他有名スタジオのアニメーターになりたい!
ここまでで京アニ、P.A.、サンライズについては新卒で採用募集がかかるということを説明しました。
ディズニーやピクサーといった海外のアニメーション制作会社やジブリ、ufotable、動画工房、A-1 Pictures、シャフトまたは3DCGで世界的に有名なポリゴン・ピクチュアズ等の人気アニメ制作会社の作品制作には、どうすれば参加できるのでしょうか?
ディズニー、ピクサーで働くには?
いきなりディズニーやピクサーに新卒で入社することは難しいです。シュガーラッシュを担当したアミ トンプソンさんは海獣の子供やハーモニーを制作しているSTUDIO4℃でアニメーターとして経験を積んだうえでディズニーに中途で採用されています。
アナと雪の女王で作画監督を務めたハイラム・オスモンドさんも同じように、大学でアニメーションを学んで卒業後7年してからディズニーに入社しています。
ディズニースタジオはアメリカのカリフォルニアにありますが、アメリカの人なら新卒で採用されるわけではありません。ただ日本人は2017年時点で4人しかおらず、どうやったら働けるのかというより、お金を払ってでも働きたい人がいるような状態です。
ディズニーに新卒で就職するためには、現地の大学に留学しインターンに採用され、能力を認められてようやく採用になるようです。中途採用であれば、他の制作会社で成果を出して認められることで入社できます。
次にピクサーですが、トイ・ストーリー4のアニメーターとして有名な原島朋幸さんの場合は、アメリカの大学院に留学し、インターン経験後、シュレックやペンギンズで有名なドリームワークスを経てピクサーに就職しています。
原島さんはアニメーターのバイブルとして「ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法」を挙げています。そう簡単に買えるような本ではありませんが、読んでおくと良いかもしれません。ちなみに彼は国立の電通大卒業後、2年サラリーマンをやって、2年デジハリで修行してアニメーターになりました。
つまり24歳からアニメーターを目指し始めたということです。25歳がデッドラインですから、スタートがぎりぎりでも本人の頑張り次第でどうにでもなることが分かります。
ディズニー、ピクサーに入社して働くには経験を積んで、中途入社することが一番可能性が高そうです。どちらも日本人は数人しかいませんから、ディズニーやピクサーにあまりこだわり過ぎないようにしましょう。
人気アニメ制作会社で働くには?
ジブリ、ufotable、動画工房、A-1 Pictures、シャフト、ポリゴン・ピクチュアズについて採用条件を紹介します。まずジブリは採用を行っていません。4年前のレッドタートルから新作はなく、宮崎駿監督は3年前から制作している新作が最後の作品になりそうです。
Fateシリーズや鬼滅の刃で神作画と絶賛されているufotableは月5万円保証で、高卒以上なら応募できます。あれだけの絵の技術はここでしか習得できないでしょう。
動画工房はダンベルやがんばるぞいのNEW GAME!で有名なアニメ制作会社ですが、随時採用募集がかかるという形態です。採用ページをブックマークしておきましょう。
SAOやかぐや様、うた☆プリといった人気作を当然のように制作するA-1 Picturesも同様に、随時採用募集がかかります。ブラック企業大賞2014にノミネートされた過去があるだけに、むしろアニメーターの労働環境には配慮がなされているものと思われます。
物語シリーズはじめ斬新な演出で楽しませてくれるシャフトも、原画スタッフを随時採用募集しています。部門ごとに分かれて募集されているので、応募しやすいアニメ制作会社ではないかと思います。
この中では異色の3CDGアニメーション(シドニアの騎士、亜人など)に特化したポリゴン・ピクチュアズですが、アニメーター、原画、CG関係と部門別に通年採用しています。
Netflix配信にいち早く参画してヒットを飛ばすなど、世界で通用する作品を作るハイレベルなアニメ制作会社なので、ディズニーやピクサーに転職しやすいと言えるかもしれません。
以上いくつかの有名なアニメ制作会社について見てきましたが、絵の技術だけではなくタイミングも重要だということが分かったと思います。常に応募してるわけではないので、見逃さないように定期的にチェックしておきましょう!
アニメーター志望の方からいただいた質問
レイズキャリアでは、アニメーターに関する相談を24時間受け付けています。そこで、アニメーター志望の方からいただいた相談とその回答をここでは紹介します。
絵をかくのが好きなので、将来はアニメーターになろうと思っていました。機会があってアニメーターの方にお話を聞いたところ、自分が思っているよりもずっと大変そうなのですが、好きなだけでは続けられない仕事なのでしょうか?
(10代女性)
実際に働かれているアニメーターに会って、話をするその行動力に感服しました。アニメ業界全般にいえることですが、給料や福利厚生は一般的な企業ほど手厚くありませんし仕事とプライベートの境界もあいまいな業界です。ですから好きなことを仕事にできているからそれでいい!くらいのスタンスでないと続けるのは難しいと思います。ライフワークとして絵を描けるのであれば、アニメーターを続けられるでしょう。
手描きだけじゃなくてデジタルの練習も必要ですか?
(10代男性)
2000年以降セル画からデジタルに移行し始め、アニメーター全員がペンタブで描いているというアニメ制作会社もあります。手描きでなければだめだ、というアニメーターもいますがいずれはデジタル化する見込みです。それに手描きだけできるよりも、デジタル対応も出来たほうが応募できるアニメ制作会社も多くなり、仕事の幅が広がるでしょう。
独学で3DとかCGをできるようにしたいのですが、具体的にどのソフトやらアプリができるようになればいいのでしょうか?
(20代男性)
Maya、3ds Maxがおすすめです。京都精華大学マンガ学部アニメーション学科でも採用されているMayaは、学生なら無料で利用することができます。3ds Maxは、亡国のアギトや宝石の国を制作した会社でも実際に利用されているアプリケーションです。ぜひ挑戦して使えるようにしましょう。
大学2年生なのですが、大学を辞めて専門学校に行ってアニメーターを目指したいと思います。あまり絵の技術に自信はないのですが、おすすめの専門学校はありますか?
(20代女性)
アニメ系の専門学校はたくさんありますが、デジタルハリウッド専門スクールをおすすめします。ピクサーの原島朋幸さんは大学卒業後、就職したあとでデジハリに進学しているからです。CGではなく手描きが上手くなりたいということであれば、アミューズメントメディア総合学院を勧めます。画力を総合的に高めるために、多角的な観点から勉強するうえ、デジタルとアナログ、両方の技術を習得できるようにサポートしてくれます。3Dソフトを独学で習得するのは難しいので、すぐに訊ける環境は大事です。